古びた木製の机に、一冊のノートが置かれている。
表紙には、手書きのタイトルがそっと記されていた。
ページをめくると、
何度も書き直した跡が薄く残っている。
幾度となく綴られた言葉は、
やがてひとつの物語を紡いでいく。
「この物語を、本にしたい ——」
その想いが、ノートを持つ手を震わせた。
誰かに読まれることを願う気持ちと、それでもなお、
自分の中だけにしまっておきたい気持ちが交錯する。
印刷所の机に並ぶ、さまざまな紙の見本。
どの紙も、物語を包む未来を宿していた。
やがて印刷機が動き出し、選ばれた紙に言葉が刻まれていく。
束ねられ、綴じられ、装丁される。
本が生まれた、その瞬間 ——。
手に取ると、ページの重みが指に伝わる。
そこには、確かに自分の言葉が生きていた。
ページをめくるたびに、胸がそっと高鳴る。
誰かがこの本を手に取るとき、
この物語はもう、自分だけのものではなくなるのだと。
それが、書くことの旅の終わりであり、始まりでもある。