朝のカフェ。
トーストの香ばしい香りが、ふわりと広がり、
ラテの湯気が、ゆっくりとゆらめいている。
近くにあったラックに視線を移すと、
フリーペーパーがさりげなく置かれていた。
表紙には、石畳の路地や木造の喫茶店が並ぶ街並みの写真に、
手書き風の優しい文字が添えられていて、どこか懐かしさを感じる。
ふと手に取りページをめくると、季節のイベント情報や話題のカフェ、
新しくできた雑貨店の紹介が丁寧に綴られていた。
「ここ、行ってみたいな。」
そんなひと言が、ふわりと心に浮かぶ。
次のページをめくると、
この街に長く根付く老舗のパン屋の特集。
創業から50年、変わらぬレシピで作られるクロワッサンは、
今も多くの人に親しまれている。
ページの片隅には、店主の優しい笑顔が小さく載っていた。
地元の人々が紡ぐ日々の営みが、この一冊にぎゅっと詰まっている。
「今日は、気の向くまま歩いてみよう。」
フリーペーパーを片手に、カフェを出る。
まだ見ぬ街角の風景に、これから巡り合う気がした。