市役所の待合室。
待ち時間を過ごしていた男性は、
何気なく近くのラックから広報誌を手に取った。
ページをめくると、
新しく完成した地域センターの記事が目に留まる。
そこには、地域の交流拠点としての役割を担う施設の紹介と、
集う人々の笑顔が写真とともに並んでいた。
「ここでワークショップが開かれるのか。」
身近な場所での新しい取り組みに、思わず関心が湧く。
次のページには、持続可能な商品開発に取り組む工場や、
職人の手仕事を特集した記事が掲載されていた。
普段何気なく通り過ぎていた場所も、
そこに宿る歴史や人々の思いを知ると、見え方が変わる。
子育て支援の充実を願う母親の声や、
まちづくりに参加する若者たちの意見も目に入る。
「なるほど、こんな風に街が動いているんだ。」
彼はそっとペンを取り出し、地域イベントの開催日を手帳に書き込んだ。
窓の外では、街路樹の葉がそよ風に揺れている。
広報誌を閉じると、
この街に少しずつ新しい息吹が生まれているのを感じた。