いつもの駅のホーム。
電車を待つ人々の中に混じりながら、
ふと手の中の回数券に目を落とす。
手のひらの中に握りしめた回数券は、少し折れ曲がり、
ギザギザの端が、何度も使った記憶を物語っていた。
電車がホームに滑り込み、車両の扉が開く。
座席に腰を下ろし、窓の外に広がる景色を眺める。
変わらないようで、少しずつ移り変わる風景。
駅ごとに降りる人、乗る人。その一つひとつが、
回数券に刻まれた物語のように思えた。
学生の頃は、この回数券を握りしめて通学した。
あの頃はただの移動手段だったが、
今こうして手に取ると、懐かしさが胸に広がる。
駅に着き、回数券を改札に通す。
軽快な音とともに、機械の中へ滑り込んでいく。
デジタル化が進み、回数券を使う機会も減った。
それでもなお、この手触りや紙の質感は、どこか温かい。
それはきっと、
過ぎていく時間の記憶をそっと刻んでくれるからだ。
ポケットの中には、まだ数枚の回数券。
これがなくなる頃には、また新しい思い出が刻まれているのかもしれない。