雨の匂いが混じる、夜明け前の静寂の中。
わずかな揺れとともに、
棚の上の写真立てがかすかに音を立てた。
次の瞬間 —— 激しい横揺れが壁をきしませ、
明かりがぱっと消えた。
「……地震だ。」
揺れが収まり、懐中電灯を手に取ると、
棚の隙間に一冊の本が挟まっているのが見えた。
それは、普段気にも留めていなかった
「災害時マニュアル」だった。
ページをめくると、
そこには淡々とやるべきことが記されている。
その冷静な文面に、
乱れた心が少しずつ整理されていくのを感じた。
遠くで、まだ微かな揺れが続いているが、
今は、落ち着いて次の行動を決められる。
このマニュアルがあるだけで、
心が少し軽くなる。
それは、不安の闇を照らす知恵の光であり、
冷静さを取り戻すための羅針盤だった。