賑やかな商店街の一角。
風に揺れる赤いのぼりには「新春大抽選会」と、
大きく書かれていた。
彼女は手の中の小さな抽選券をそっと握りしめる。
数字と小さなロゴが印刷されたそれは、
ほんの一瞬の期待を託すには十分な存在感を持っていた。
「次の方、どうぞ!」
呼ばれた声に顔を上げ、彼女は一歩前に出る。
手元の抽選券を係の人に渡すと、
カラカラと回る抽選器の音が、小さな期待を膨らませる。
赤、青、黄色の玉が踊るように転がり、
やがて一つがコロンと落ちる。
「おめでとうございます!三等、特製トートバッグです!」
驚きも落胆もない結果に、自然と笑みがこぼれた。
彼女はそれを手にしながら、
この瞬間が日常に小さな彩りを添えたことを感じていた。