静かな日曜の午後。
新婚の二人は、ハウスメーカーのカタログを広げ、
理想の暮らしを思い描いていた。
「こんな家、いいね。」
夫がそうつぶやきながら、ページをめくる。
大きな窓から陽光が差し込む、開放的なリビング。
天井まで伸びる木目の壁が、温かみを感じさせる。
「このキッチン、憧れるな。」
妻の指先が、シンプルで機能的なキッチンのページをなぞる。
白を基調としたデザインに、温もりを添える木のカウンター。
ここで料理をしている自分が、自然と思い浮かぶ。
カタログの片隅には、手書き風のコメントが添えられていた。
「家族の時間を大切にする設計」「光と風を活かした空間づくり」
次のページには、広々としたウッドデッキの写真。
「ここでコーヒーを飲んだら気持ちよさそうだね。」
夫婦の間に、ふっと笑顔が生まれる。
カタログを閉じると、しっかりとした紙の感触が手のひらに残った。
夢が少しずつ形になっていくような、高揚感が心に広がる。
「見学会、行ってみようか。」
夫の言葉に、妻は微笑んでうなずいた。
カタログは、未来の暮らしへとつながる小さな一歩だった。