ショーケースの向こうに並ぶ、色とりどりの焼き菓子。
ガラス越しに眺めるだけで、甘い香りがふわりと漂ってくる気がした。
「どれにしようかな……」
子どもは目を輝かせながら、どれにしようかと迷っている。
選んだのは、バターが香るマドレーヌと、
ほんのりビターなチョコレートクッキー。
店員が優しく微笑みながら、それぞれを丁寧に包む。
包装紙は、小さな幸せもそっと包んでいるようだった。
帰り道、小さな手が待ちきれない様子で袋の中を探る。
「まだ開けちゃダメよ。」母親の声に、子どもは小さく頷いた。
家に着き、包装紙を開く静かなときめき。
ゆっくりと紙をほどくと、ふわりと焼き菓子の香りが広がった。
包装紙は、お菓子を味わったあとも、大切にとっておきたくなる。
「かわいいね。」そう言いながら、そっと引き出しにしまう。
月日が経ち、何気なく包装紙を手に取ると、
あの日の甘いひとときが、心の中にそっと蘇る。
包装紙は、ただ包むためのものではなく、
思い出をそっと残してくれるものなのかもしれない。