劇場のロビーに足を踏み入れると、
ほのかにポップコーンの香ばしい香りが漂う。
カウンターの前には、上映を待つ人々が列をなしている。
観客が手にしているのは、映画のチケット。
上映時間と座席番号が記されたチケットは、
今夜、観客を物語の扉へといざなう。
係員にチケットを差し出すと、
小さな音を立てて半券が切り取られる。
受け取った小さな半券をそっとポケットにしまい、
男性は劇場の暗がりへと足を踏み入れる。
スクリーンが静かに明るくなり、映像が動き出す。
光と影が交錯し、登場人物の息遣いが胸に響く。
やがてクライマックスが訪れ、
スクリーンいっぱいに広がるその結末に、観客は息をのんだ。
エンドロールの文字が流れる頃には、
ゆったりと背もたれに体を預け、余韻を味わっていた。
劇場を出ると、夜風が冷たく、空気が澄んでいた。
男性はポケットから半券を取り出すと、
いつかこれを見返したとき、今夜の静かな感動がふと蘇る気がした