静かな学会会場。
整然と並ぶポスターの前を、研究者たちがゆっくりと歩いていく。
ホールの一角に展示された一枚のポスターが、ひときわ目を引いた。
青みがかった照明の下、落ち着いた色調が静かに際立つ。
的確に配置された図表と簡潔な文章が、
研究の核心を端的に伝えていた。
「これは興味深いですね。」
立ち止まった研究者が、ポスターの細部を目で追いながらつぶやく。
その声に応えるように、発表者が一歩、前へと進み出る。
「このデータが示すのは、従来の仮説とは異なる傾向です。」
指先がグラフをなぞり、その動きを追うように、視線が交錯する。
短い沈黙のあと、さらに深い議論が始まった。
ポスターに記された一つひとつの言葉が、知の架け橋となる。
研究室で積み重ねた試行錯誤が、今、目の前の誰かに届こうとしている。
人の流れは、次のポスターへと移っていく。
それでも、一度交わした言葉と視線は、静かに記憶の中に残る。
学会が終わり、発表者はポスターを丁寧に丸める。
指先に伝わる紙の手触りと、そこに込めた時間の重み。
学会ポスターは、ただの紙ではない。
それは、知の鼓動が刻まれた、一つの証だった。