仕事帰り、ふと立ち寄った書店の静かな空気に包まれる。
棚に並ぶ本の中で、目に留まったのは、一冊の猫の写真集だった。
古い町並みの片隅、まるくうずくまる一匹の猫。
夕陽の柔らかな光が、猫の輪郭をふんわりと包んでいた。
女性はそっとページをめくる。
静かな路地裏で、じっと何かを見つめる子猫。
草むらの中、風を感じながら伸びをする三毛猫。
誰かの玄関先でくつろぎ、気まぐれにしっぽを揺らす黒猫。
どの一枚にも、猫たちの気ままな時間が流れている。
その瞬間を見つめる撮影者の優しいまなざしが伝わってきた。
帰り道、ベンチに腰を下ろし、写真集を開くと、
遠くで小さな鳴き声がした。
前を見ると、すぐそばの茂みから、
一匹の猫がこちらをじっと見つめている。
まるで、本の世界から抜け出してきたかのように。
女性はそっと微笑み、写真集を閉じた。
きっとまた、この本を開けば、
猫たちは変わらぬ世界で待っている。