企業の未来を切り開く、SXとは?を簡単に解説
企業の未来を考える上で避けて通れないキーワード「SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)」。私たちが直面する環境や社会の課題を解決しながら、企業価値を長期的に向上させるためには、どのような取り組みが必要なのでしょうか?
本記事では、SXの基本的な概念から具体的な事例、そしてその実践方法について詳しく解説します。企業や個人がどのようにしてこの潮流に乗り、持続可能な未来を築いていけるのかを一緒に見つけていきましょう。
このような方におすすめ
- 企業の持続可能な成長を目指している方
- 環境問題に取り組む具体的な方法を探している方
- 環境に配慮した製品やサービスを提供したい方
- 新しい技術やイノベーションを活用して企業価値を高めたい方
- SDGsを実践したい企業の経営者様
目次[非表示]
- 1.SXとは何か?
- 2.現代社会における企業リスクと不確実性の高まり
- 2.1.1. 感染症(パンデミック)による経済危機
- 2.2.2. 第四次産業革命の進展に伴う技術革新
- 2.3.3. サプライチェーンの寸断
- 2.4.4. 気候変動問題
- 3.SXの重要性
- 4.SXの具体的な取り組み例
- 4.1.1. エネルギーの節約
- 4.2.2. 再生可能エネルギーの利用
- 4.3.3. リサイクルの推進
- 4.4.4. プラスチックの使用削減
- 4.5.5. 環境に配慮した製品の選択
- 4.6.6. 持続可能な交通手段の利用
- 4.7.7. 労働環境の改善
- 4.8.8. 地域社会への貢献
- 4.9.9. 環境教育の推進
- 5.SX導入の成功事例の紹介
- 6.SXを続けるための鍵とは?
- 7.SXに関連した言葉の意味
- 7.1.SDGsとSXの関連性
- 7.2.ESGとSXの関連性
- 7.3.DXとSXの関連性
- 7.4.GXとSXの関連性
- 7.5.サーキュラーエコノミーとSXの関連性
- 8.まとめ
SXとは何か?
SXとは、企業と社会のサステナビリティを同期化させ、そのために必要な経営・事業変革を行い、長期的かつ持続的な「企業価値向上」を図っていくための取り組みです。この取り組みによって、企業の『稼ぐ力』を高めていくことを目指します。
日本経済は、バブル経済が崩壊してからの約30年間、長期間の低成長により、2023年の日本の名目国内総生産(GDP)はドイツに抜かれ世界4位に転落しました。その状況の中で注目されているのが「サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)」で、日本経済の再生と成長の鍵として期待されています。
① 「稼ぐ力」の持続化・強化
企業が長期的に成功し続けるためには、「稼ぐ力」(企業の強みや競争力、ビジネスモデル)を維持・強化することが不可欠です。これを実現するためには、企業は事業ポートフォリオの管理や新しいアイデアを育てる取り組みが求められます。
例えば、新しい製品やサービスの開発、既存の事業の改善が考えられます。これにより、企業は環境の変化に柔軟に対応し、持続可能な経営を実現します。
② 社会のサステナビリティを経営に取り込む
企業は、不確実な未来に備えるために、社会が将来どのように変化するかを予測し、その中での自分たちの役割を考えます。これを「バックキャスト」といいます。つまり、未来から現在を見て、企業がどのように「稼ぐ力」を持続・成長させるかを考えるのです。
これにより、企業は中長期的なリスク(危険)とオポチュニティ(機会)を把握し、それを経営戦略に反映させていきます。
③ 長期の時間軸の「対話」によるレジリエンスの強化
将来の不確実性が高まる中で、企業が持続可能な成長を続けるためには、投資家との対話が重要です。企業と投資家は、「稼ぐ力」の持続化や社会のサステナビリティを考慮し、未来についてのシナリオを何度も話し合います。これにより、企業は将来の変化に対応する力(レジリエンス)を高め、中長期的な価値創造の方向性を明確にします。
現代社会における企業リスクと不確実性の高まり
不確実性が高まる現代社会では、企業や組織が直面しているリスクは多様で複雑です。以下に挙げる4つの主要な問題は、企業が対策を講じる上で特に重要な考慮事項となっています。
1. 感染症(パンデミック)による経済危機
新たな感染症の流行は、世界中の企業活動に深刻な影響を及ぼしています。例えば、COVID-19パンデミックは、多くの業界で労働力の不足、消費者行動の変化、売上の大幅な減少を引き起こしました。
企業は、リモートワークの導入、デジタルトランスフォーメーション(DX)の加速、衛生管理の強化などを通じて、このような危機に対処する必要があります。
2. 第四次産業革命の進展に伴う技術革新
人工知能(AI)、ロボティクス、インターネットオブシングス(IoT)、ビッグデータなどの技術は、産業の構造を大きく変化させています。
これらの技術を取り入れることで、生産性の向上、コスト削減、新たなビジネスモデルの創出が可能になりますが、同時に従来の業務や職種が置き換わるリスクも伴います。
企業はこれらの技術を活用し、持続可能な競争力を確保するための戦略を練る必要があります。
3. サプライチェーンの寸断
自然災害、政治的な緊張、貿易戦争などにより、サプライチェーンは脆弱性を露呈しがちです。これにより、生産の遅延や原材料の供給不足が発生することがあります。企業はサプライチェーンの多様化、ローカルサプライヤーの活用、在庫管理の最適化などを通じて「供給網の強化」を図る必要があります。
※サプライチェーン:製品やサービスが顧客に届くまでの一連のプロセスやネットワーク
※ローカルサプライヤー:企業が特定の地域で生産された原材料や部品を調達する際の地域内の供給業者や販売業者
4. 気候変動問題
気候変動は、資源の枯渇、極端な気象条件、生態系の変化など、多方面にわたる影響を与えています。これにより、企業の運営コストが増加することや、持続可能な資源の確保が困難になる可能性があります。
CO2排出量の削減、再生可能エネルギーの利用、持続可能な材料へのシフトなど、環境に配慮したビジネスプラクティスの採用が求められています。
これらの問題に効果的に対応するためには、企業が前述のSXの原則を適用し、経営戦略を持続可能なものへとシフトさせることが重要です。
※ビジネスプラクティス:ビジネスにおいて一般的に行われる方法や習慣、行動様式、手法
SXの重要性
環境保全やコスト削減、労働環境の改善といった多岐にわたる課題解決の手段として、SXの導入は今や不可避です。ここでは、企業に求められるSXの重要性とその具体的なメリットについて深掘りしていき、その背景や具体的な取り組み、未来に向けた責任について詳しく紹介します。
環境の問題
私たちは気候変動や自然資源の枯渇、海洋汚染など、多くの環境問題に直面しています。これらの問題を放置すると、未来の世代が安全で健康な生活を送ることが難しくなります。SXは、環境への負担を減らすための変革を行い、持続可能な社会を築くことを目指しています。
経済の問題
資源が限られている中で、無駄遣いを減らし、効率的に使うことが求められています。SXの導入によって、企業は資源を有効に活用し、コストを削減しながら競争力を保つことができます。
社会の問題
労働条件の改善や地域社会への貢献も重要です。SXは、企業が従業員の健康や福祉を向上させ、公平な労働環境を提供することを促進します。これにより、企業と社会全体の信頼関係が強化されます。
未来への責任
私たちは次世代に良い環境と社会を残す責任があります。SXは、今の私たちが持続可能な行動を取ることで、未来の子どもたちが安心して暮らせる世界を作るための重要なステップです。
SXは地球や社会の問題を解決し、私たちと未来の世代がより良い生活を送るための重要な取り組みです。これを実現するためには、みんなが協力して変革を進める必要があります。
SXの具体的な取り組み例
持続可能な未来の実現に向けた取り組みは「企業の価値向上」につながります。ここでは、SXの取り組み例を紹介します。エネルギー節約から環境に配慮した製品選択まで、多岐にわたる実践例を知って、新たな一歩を踏み出しましょう。
1. エネルギーの節約
会社や家庭での電力使用を減らすために、LED電球に交換することを検討しましょう。LED電球は、従来の電球よりも少ない電力で同じ明るさを保ち、さらに長持ちします。
初期費用は他の照明器具より高くなる場合がありますが、長寿命と省エネ効果によって、長期的にはコスト削減が期待できます。
2. 再生可能エネルギーの利用
ソーラーパネルを設置して、太陽のエネルギーを使って電気を作ります。これにより、化石燃料に頼らず、クリーンなエネルギーを活用できます。他にも、風力発電や水力発電、地熱発電、バイオマスエネルギー、海洋エネルギーの利用が考えられます。
ただし、初期コストやメンテナンス費用、エネルギーの安定供給、そして環境への影響といったデメリットも併せて慎重に検討することが重要です。
3. リサイクルの推進
ペットボトルや紙、アルミ缶を分別してリサイクルに出します。リサイクルすることで、新しい資源を節約し、ゴミを減らせます。
4. プラスチックの使用削減
買い物の時にプラスチック製のレジ袋を使わず、自分のエコバッグを持参します。プラスチックの使用を減らすことで、環境への負担を軽減します。
5. 環境に配慮した製品の選択
環境に優しい印刷インキや印刷用紙を使います。これらの製品は、生産や使用の過程で環境に与える影響が少なくなっています。ノンVOCインキは、成分中に石油系溶剤を含まず、大気汚染のリスクを抑制します。
FSC®認証紙を使用すると、森林伐採に伴う生態系への影響や温室効果ガスの排出削減に貢献し、気候変動の影響を軽減する一助となります。
6. 持続可能な交通手段の利用
車を使わずに、自転車や公共交通機関を利用します。これにより、CO2の排出を減らし、空気をきれいに保つことができます。また、自転車の利用は運動不足の解消や心肺機能の向上に役立ち、健康面でのメリットも得られます。
公共交通機関の利用は、歩く機会を増やし、日常生活の中での活動量を自然に高める効果があります。
7. 労働環境の改善
会社では、従業員の働きやすい環境を整えるためにリモートワークを導入することが考えられます。従業員が仕事と家庭のバランスを取りやすくなり、働きやすい環境が整います。
8. 地域社会への貢献
会社が地域のイベントや清掃活動に参加します。これにより、地域社会とのつながりが深まり、地域全体が元気になります。
9. 環境教育の推進
学校や企業が環境問題についての教育プログラムを実施します。これにより、子どもたちや従業員が環境について学び、持続可能な行動を取るきっかけになります。
これらの取り組みは、誰でも実践できるものから企業全体で行うものまでさまざまです。大事なのは、小さなことでも続けることで、持続可能な未来に向けた大きな一歩になるということです。
SX導入の成功事例の紹介
SXの取り組みを成功させている企業として、いくつかの例を挙げることができます。例えば、パタゴニアは製品の製造過程において、環境負荷を最小限に抑える努力を続けています。
また、ユニリーバは持続可能な農業の推進やプラスチック廃棄物の削減に力を入れています。これらの企業は、SXを実践することで信頼と利益を両立させています。
SXを続けるための鍵とは?
SXを長期的に続けるためには、企業文化として持続可能性を根付かせることが必要です。経営層はもちろん、従業員全体がその重要性を理解し、具体的な行動に結びつけることが求められます。
また、定期的な評価と改善を繰り返すことで、持続可能なビジネスモデルが形成されます。こうすることで、企業全体が一体となってSXに取り組み続けることが可能になります。
SXに関連した言葉の意味
企業が持続可能性を追求するための道筋として、ESG、DX、GX、そしてサーキュラーエコノミーといった様々なフレームワークや取り組みが存在します。ここでは、SXとの関連性や企業が実際にどのようにこれらを活用して持続可能な社会を構築していくかについて詳しく解説します。
SDGsとSXの関連性
SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)は、2015年に国連で採択された、2030年までに達成すべき17のグローバルな目標で構成される国際的な取り組みです。
SXを通じて、企業や組織はSDGsの目標を具体的な行動に落とし込み、持続可能な社会の実現に向けた取り組みを加速させることが求められています。
経済的側面 |
目標 08:働きがいも経済成長も
目標 12:つくる責任 つかう責任 など
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社会的側面 |
目標 03:すべての人に健康と福祉を
目標 04:質の高い教育をみんなに
目標 05:ジェンダー平等を実現しよう など
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環境的側面 |
目標 06:安全な水とトイレを世界中に
目標 13:気候変動に具体的な対策を
目標 15:陸の豊かさも守ろう など
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ESGとSXの関連性
ESG(Environmental, Social, Governance)は、環境、社会、ガバナンスの略で、企業の持続可能性を評価する基準として用いられます。投資家が企業を評価する際に、このESGの観点が重視されるようになりました。
ESGは、企業が持続可能な運営を行うための具体的な基準や目標を提供します。一方で、SXはその目標を達成するための実際の行動や戦略を意味します。言い換えると、ESGが「何をすべきか」を示し、SXが「どうやって実行するか」を示しています。
このように、ESGとSXは相互に補完し合う関係にあります。
ESGを基盤とした変革 |
SXは、ESG評価を改善するための具体的なアクションプランや戦略を提供します。 |
長期的な価値創造 |
SXは、ESG基準を発展させ、より広範で長期的な持続可能性の目標を設定し、達成に向けて企業全体を変革します。 |
ステークホルダーの関与 |
SXは、ステークホルダーとの関係を強化し、ESGの取り組みを通じて企業価値を高めることを目指します。 |
DXとSXの関連性
DX(Digital Transformation:デジタル変革)は、デジタル技術を活用してビジネスモデル、業務プロセス、製品・サービスを革新することで、企業の競争力や効率を向上させることを指します。主な目的には、顧客体験の向上、新たなビジネスチャンスの創出、業務の効率化、意思決定の迅速化などが含まれます。
一方、SXは、企業活動を持続可能な方向に導くための変革を指し、環境負荷の低減や社会的責任の履行を目的とします。 これら二つの変革は、相互に補完し合いながら企業の持続可能な成長を実現します。
効率性の向上と環境負荷の軽減 |
DXによる業務の効率化は、資源の使用量やエネルギー消費を削減し、環境への負荷を軽減します。 |
サプライチェーンの透明性向上 |
DXは、サプライチェーン全体の透明性を高め、持続可能な調達や生産プロセスの確立を促進します。 |
新しいビジネスモデルの創出 |
DXとSXを組み合わせることで、シェアリングエコノミーや循環経済を促進し、資源の効率的な利用を実現します。 |
GXとSXの関連性
GX(Green Transformation:グリーン変革)は、環境負荷の削減や再生可能エネルギーの活用を通じて、持続可能な社会を実現するための取り組みです。
GXとSXは相互に補完し合う取り組みであり、GXの環境変革はSXの全体的な持続可能性目標を達成するための重要な要素となります。
企業や社会は、GXを通じて具体的な環境対策を講じる一方で、SXの枠組みを通じて、持続可能な社会の実現を目指すことが求められます。
環境保護を中心としたアプローチ |
企業は、GXを通じてカーボンニュートラルの達成や再生可能エネルギーの導入など、具体的な環境目標を達成し、SXの環境面での取り組みを強化します。 |
相互補完的な取り組み |
GXの具体的な環境対策は、SXの全体的な目標達成に向けた重要な要素となります。 |
長期的な持続可能性の促進 |
GXを推進することにより、企業や社会は持続可能な資源利用と環境保護を実現し、長期的な持続可能性を確保します。 |
サーキュラーエコノミーとSXの関連性
サーキュラーエコノミー(循環型経済)は、資源の利用と廃棄物の発生を最小限に抑え、製品や材料をできるだけ長く使い続ける経済モデルです。
製品の設計から廃棄に至るすべての段階で、持続可能な資源管理を図り、環境負荷の低減と経済的な利益の両立を目指します。
循環型経済は、SXの目標を達成するための具体的な戦略の一つであり、従来の使い捨て型経済(リニアエコノミー)とは異なります。
資源効率の向上 |
サーキュラーエコノミーの実践により、資源の使用を最小限に抑え、廃棄物や環境負荷を減少させることができます。 |
経済的持続可能性 |
リサイクル材料の使用や製品の再利用により、コスト削減や新しいビジネスチャンスが生まれます。 |
イノベーションの促進 |
リサイクル技術や新しい製品設計などのイノベーションを促進し、SXの枠組み内で重要な役割を果たします。 |
まとめ
この記事では、SXについて詳しく解説し、その関連する概念や具体的な取り組み、成功事例について紹介しました。持続可能な未来の実現に向けて、SXは環境、経済、社会の全ての側面において重要な役割を果たします。
持続可能な未来の実現には、企業だけでなく、個人や社会全体の協力が必要です。私たち一人ひとりが小さな取り組みを継続することで、大きな変化を生み出すことが可能となります。SX を通じて持続可能な社会の実現に向けた取り組みを続けていきましょう。
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